デスティニー 未来を知ってしまった男

first snow

ガイ・ピアース主演の日本未公開サスペンス映画。
原題はFIRST SNOW。2006年作品。

やり手セールスマンのジミー(ピアース)が、砂漠の田舎町で占い師(J・K・シモンズ)に自分の未来を占って貰ったところ、「初雪(=First Snow)の日にあんたは死ぬ」と言われ、強迫観念に取り憑かれて平凡な人生が少しずつ狂っていってしまうというお話。

サスペンスとはいっても、かなり静かで淡々とした映画です。
見る人によっては「退屈」と思うかもしれません。
でもこの映画の場合、この淡々とした展開がいいんです。

果たして胡散臭い占い師の言った事は正しいのか?
もしそうだとして、ジミーにどんな死(事故死・病死など)が待っているのか?
仮に誰かに殺されるのだとしたら、一体誰なのか?

…というような”迫り来る不安”が静かに描かれていくのですが、静かに精神のバランスを崩していくガイ・ピアースを筆頭に、『スパイダーマン』シリーズのJ・K・シモンズ、『プリズン・ブレイク』の”マホーン捜査官”ことウィリアム・フィクトナー、『プレステージ』(06)のパイパー・ペラーボ、『バッド・ルーテナント』(09)のシェー・ウィガム、『コーチ・カーター』(05)のリック・ゴンザレスらクセ者俳優が、皆さんいい芝居をしていらっしゃいます。

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マイケル・ダナ名作選 / サーフズ・アップ (2007)

surfs up

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。今回はマイケルの作品から、CGアニメ映画『サーフズ・アップ』(07)をご紹介します。

サーフィン大会で優勝を狙う青年ペンギン・コディ(声:シャイア・ラブーフ)とその仲間たち、そして伝説のプロサーファー”ビッグZ”(声:ジェフ・ブリッジス)とのユルいドラマをドキュメンタリー番組タッチで描いたアニメ。

マイケル・ダナといえば、アトム・エゴヤンとかアン・リーのようなシリアスドラマ専門の映画音楽家という印象だったので、「マイケルがペンギンアニメの音楽をやるの?」と当時かなり意外に思ったもんです。

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ボーン・レガシー(音楽について)

the bourne legacy_ost

ジェイソン・ボーン・シリーズの立役者を4人挙げるとするならば、

主演のマット・デイモン、
1作目の監督・シリーズ3作の製作総指揮のダグ・リーマン、
2・3作目の監督のポール・グリーングラス、
そして音楽のジョン・パウエルという事になるでしょう。

この4人が全員プロジェクトから離脱して、『ボーン・レガシー』(12)の音楽は一体誰が担当する事になるのかと思ったら、ジェームズ・ニュートン・ハワードが手掛ける事になりました。

監督のトニー・ギルロイとは『フィクサー』(07)と『デュプリシティ』(09)で仕事しているし、プロデューサーのフランク・マーシャルとも一連のM・ナイト・シャマラン作品で交流があるので、この人選は割とすんなり決まったのではないかと。

さてジェイソン・ボーン・シリーズの音楽と言えば、サンバの如く豪快にパーカッションを鳴らしまくるスピード感&グルーヴ感抜群のサウンドが魅力だったわけですが、果たしてパウエルが生み出した”ジェイソン・ボーン・サウンド”をJNHがどう料理するのか。似たようなノリのスコアを書くのか、あるいはパウエルとは違う手法で攻めてくるのか、個人的には興味津々でございました。

先に結論から申しますと、前者の「似たようなノリのスコア」でした。
JNHの仕事で言えば『ソルト』(10)のノリに近いサウンドかなー。

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HAYWIRE/エージェント・マロリー(音楽について)

haywire

文章が長くなって前回書けなかった『エージェント・マロリー』(11)の音楽について。
オリジナル・スコア作曲は『オーシャンズ11』(01)のデヴィッド・ホームズです。

スティーヴン・ソダーバーグ映画の常連作曲家といえば真っ先にクリフ・マルチネスの名前が挙がるわけですが、マルチネスは『トラフィック』(00)とか『コンテイジョン』(11)などのシリアスドラマ系、ホームズは『オーシャンズ』シリーズや『アウト・オブ・サイト』(98)のような娯楽映画系、という感じで作品によって作曲家も使い分けている様子(『エリン・ブロコビッチ』(00)と『さらば、ベルリン』(06)ではトーマス・ニューマンを起用してたけど)。

で、この『エージェント・マロリー』のホームズの音楽が実にカッコイイ。

サウンド的には『アウト・オブ・サイト』の流れを組む、ドラムス&ベースのグルーヴで聴かせるクラブ/ジャズ系の音。「もしラロ・シフリンが今風のクラブ/ジャズ系のスコアを書いたら?」みたいな感じのサウンドです。威勢のいいブラスの鳴らし方とか、エレキギターのレトロな音の響きとか、70年代TVシリーズの音楽を彷彿とさせるものがありますな。メロディーを楽しむというより、グルーヴを楽しむスコア。

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『ザ・ファン』のサントラを補完してみる

the fan

故トニー・スコット監督が「野球の事を全然知らない(興味がない)」のに撮ったというメジャーリーグを舞台にしたサイコ・サスペンス映画『ザ・ファン』(96)。

ロバート・デ・ニーロがうだつの上がらないナイフのセールスマン、ギル・レナード、「黒い中学生」ウェズリー・スナイプスが高給取りのメジャーリーガー、ボビー・レイバーンを演じてます。デ・ニーロがナイフのセールスマンというだけでまず恐い。「ファンはどうでもいい」という”いかにも”な発言をカマすスター選手をイヤミに演じたスナイプスもいい芝居してます。巷の評価はイマイチっぽいですが、僕はこの映画結構好きです。

ボビーの口八丁なエージェント役のジョン・レグイザモ、ボビーのライバル選手プリモ役のベニチオ・デル・トロ、姉御チックなスポーツ記者のエレン・バーキン、放送関係の技術屋役でジャック・ブラック、ギルの元相棒役に『遊星からの物体X』(82)でバケモノになっちゃったチャールズ・ハラハンなど、有名どころの俳優が総出演。

オリジナル・スコア作曲はハンス・ジマー。ギルが「大のローリング・ストーンズ好き」という設定なので、劇中はストーンズの音楽ガンガン!…なのですが、権利関係の都合でサントラ盤には未収録。それだけならまだいいのですが(よくないけど)、その他にも劇中仕様曲がサントラに入ってなくて、その代わりに未使用曲がボーナストラックに入ってたりして、実にありがた迷惑な仕様のアルバムになってます。そういやこの時期にTVT Recordsから出たサントラはこういうのが多かったっけ。

というわけで、サントラ収録曲は以下の通り。

01: DID YOU MEAN WHAT YOU SAID / Sovory
02: LETTING GO / Terence Trent D’Arby
03: UNSTOPPABLE / Mic Geronimo (未使用曲)
04: HYMN OF THE BIG WHEEL / Massive Attack
05: (LET ME UP) I’VE HAD ENOUGH / Kenny Wayne Shepherd
06: LITTLE BOB / Black Grape
07: THE BORDER SONG (HOLY MOSES) / Raymond Myles (未使用曲)
08: WHAT’S GOIN’ DOWN / Honky
09: DELIVER ME / Foreskin 500
10: FOREVER BALLIN’ / Johnny “J” And Big Syke
11: I’M DA MAN / Jeune (未使用曲)
12: SACRIFICE / Hans Zimmer (オリジナル・スコア・メドレー)

ちなみに02はジマー作曲のメインテーマにテレンス・トレント・ダービーが歌詞をつけて歌ったものです。
ジマーのスコアメドレーは19分くらいあります。
ギルの狂気を表現した陰鬱なエレクトロ・スコアがスリリングでいい感じ。

では早速未収録曲を補完して、俺ジナルなサントラを作りましょう。

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