■デレク・シアンフランス監督によるライナーノーツ
(注:かなり大雑把な訳です)
90年代前半、ティーンエイジャーだった僕は、ミスター・バングルのライブでデンバーのゴシック・シアターにいた。
兄が彼らの1stアルバムをクリスマスに買ってくれて以来、車の中でアルバムを聴かない日はないほどだった。
ステージではバンドメンバー全員がマスクを被って演奏していて、まるでフェリーニ映画の中で自動車事故に遭ったような気分になった。
シンガーのマイク・パットンは、ボンデージマスクと馬の遮眼帯を身につけていた。
アラン・パーソンズ・プロジェクトのTIMEのカヴァーを演奏していた時、パットンはおもむろに跪いたかと思ったら、
セキュリティの男のハゲ頭を舐めてセレナーデを聞かせ始めた。
その時からマイク・パットンは僕のヒーロー、そしてアイドルになったのだ。
「鬼才(奇才)」「変態」と言われているマイク・パットンに贈る言葉として、恐らくこれ以上の賛辞はないのではないでしょうか。
サントラ盤には監督のライナーノーツが寄稿される事がありますが、
「○○は素晴らしい才能の持ち主だ」とか、
「彼の音楽は素晴らしい」というような、
至ってフツーのコメントが多かったりします。
そんな中、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(13)のサントラに寄稿したデレク・シアンフランス監督のライナーノーツがこれですよ。
パットンの変態的ステージパフォーマンスにあえて言及して、しかも「その光景を見て以来、彼は自分のヒーローになった」と断言するセンス。
この人は本当にマイク・パットンが好きなんだなーと伝わってくる素晴らしいライナーノーツです。単なるお世辞なんじゃありません。
シアンフランス監督が筋金入りのパットン・ファンだという事が分かるアツい文章です。