新進気鋭の作曲家、ベンジャミン・ウォルフィッシュの緻密な編曲が光る『ハリケーンアワー』の音楽

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ポール・ウォーカーが無人の病院で発電機のハンドルを回し続けて奮闘する、
限定空間型サバイバル・スリラー『ハリケーンアワー』(13)。
音楽はイギリス人の若手作曲家ベンジャミン・ウォルフィッシュが手掛けております。

インディペンデント映画のサントラの面白さは、
あまり有名でない(あるいはブレイク前の)作曲家の仕事が楽しめること。
ウォルフィッシュの場合は後者にあたるミュージシャン。
最近だとブライアン・コックス主演のUK産脱獄映画『DATSUGOKU-脱獄-』(08)の音楽を担当してます。
入り組んだ物語構成と、UKを代表する演技派俳優のアンサンブルが実に見応えある作品でした。
音楽的にもかなり面白いアレンジを聞かせているので、個人的にオススメです。

 

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今は亡きポール・ウォーカーの熱演に目頭が熱くなりました…。 佳作サバイバル・スリラー『ハリケーンアワー』

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2014年最初の内覧試写は『ハリケーンアワー』(13)でした。
今は亡きポール・ウォーカーの遺作の一つです。

ハリケーン「カトリーナ」の直撃を受けて機能が停止した病院を舞台に、
亡き妻の忘れ形見である生後間もない娘を守るため、
長く孤独な持久戦に身を投じる男ノーラン(ポール・ウォーカー)の物語。
某掲示板あたりだと、
「ポール・ウォーカーが発電器のハンドルを延々と回す話」とネタにされそうですが、
涙なくしては観られない、異色の感動作に仕上がっています。

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パイプオルガンの響きに「神」を見た… クリフ・マルチネス作曲『オンリー・ゴッド』の音楽のこと

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『Only God Forgives』(13)という原題が、
どうしてForgivesを省いて『オンリー・ゴッド』になってしまったのか。
『プレステージ』(06)の没タイトル『イリュージョンVS』に匹敵する、
英文法的にちょっとおかしい「ブツ切り系」の邦題に久々に遭遇した気がする。
まぁ強引に解釈するなら、
原題は「神のみが許したもう」的なニュアンスで”赦し”を強調したもの。
一方、邦題は「唯一神」的な意味合いを強くしたのかなと。
で、その「神」に相当するのが鉄面皮のチャンさんという事なのでしょう。

それにしても、いろんな意味ですごい映画だった…。
チャンさんが俺様ルールで悪党(罪人)を「処刑」する度に、
「残虐行為手当」とか、
「なさけ むよう」とか、
「FATALITY」と字幕が出るんじゃないかという気分になりました。
(分かる人には分かる表現かと)

ライアン・ゴズリング主演×ニコラス・ウィンディング・レフン監督
『ドライヴ』のコンビが映画の既成概念を破壊する――

そんなキャッチコピーの方が合ってるかもしれません。
『ドライヴ』のノリを期待すると「何じゃこりゃ」と面食らう事必至ですので。

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追悼フィリップ・シーモア・ホフマン/マイケル・ダナ名作選:『カポーティ』(05)

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今週は別なネタを書くつもりでしたが、
フィリップ・シーモア・ホフマンの訃報を聞き、
どうしても書きたいこと出来てしまったので予定を変更しました。

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、
マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。
今回はマイケルの作品から、
ホフマンが作家トルーマン・カポーティを演じてアカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた実録ドラマ、
『カポーティ』(05)のサウンドトラックをご紹介します。

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