改造車!パンクス!UKロック!『ドゥームズデイ』には男のロマンが詰まってる!の巻

『ディセント』(05)のニール・マーシャル監督待望の新作、遂に日本公開!・・・って事で、
『ドゥームズデイ』(08)を観てきました。

シルバーウィーク期間中はチケットを買う際に、
窓口で「世界の終わり」と言うと1,000円で観られる「お得すぎてすいま千円キャンペーン」を実施中との事で、
ちゃっかり利用させて頂きました。
まー別に窓口で「すいま千円」とダジャレを言うわけではなかったので別にいいかと。

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正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官(音楽について)

前回のブログで映画本編については大体ご紹介してしまったのですが、補足・・・というか小ネタを一点だけ。実はこの映画、ショーン・ペンが小さな役で出演していたのですが、諸般の事情で出演シーンがまるまるカットされてしまったそうです。はてさて、一体どんなキャラクターを演じたのでしょうかねぇ。ちょっと気になります。

ま、それはさておき、本日は『正義のゆくえ』の物語を彩る音楽について。

本作のオリジナル・スコアはマーク・アイシャムが担当しています。『クラッシュ』(04)、『告発のとき』(07)、『帰らない日々』(07)など、このところ社会派ドラマの仕事が続いておりますが、映画のジャンルはもちろん、音楽的にもクラシック、ジャズ、ロック、アンビエントなどあらゆる様式に柔軟に対応出来る多才な人です。

個人的に、学生時代に聴いた『ハートブルー』(91)のシンセ・スコアや『蜘蛛女』(94)のエレクトリック・ジャズの音楽に感銘を受けて以来アイシャムさんのファンだったので、今回のライナーノーツは楽しんでお仕事させて頂きました。念願叶って、アイシャムさんにインタビューまで出来ましたし。

実は以前『告発のとき』のライナーノーツを担当する事になった時にも、アイシャムさんにはインタビューを試みたのですが、その時は先方のスケジュールの都合でうまくいきませんでした。しかし誠意ある交渉(単にしつこかっただけかもしれない)の結果、今回は二つ返事でOK。いろいろ話を聞かせてもらいました。いやー、いい人でよかった。大御所なのに全然気取ったところがないのです。

輸入盤ではなく、あえて国内盤を買って下さる映画/サントラ・ファンのために、ブックレット用インタビューでは「群像劇の曲作りの面白さ」、「『正義のゆくえ』の作曲コンセプト」、「映画の中で特に印象に残った場面」などについてアイシャムさんに熱く語ってもらいました。

詳しくはランブリング・レコーズさんから9/2にリリースになったサントラ盤をお買い求め頂いて、拙稿に目を通して頂ければと思います。

オリジナル・スコアもかなりクオリティ高いです。『クラッシュ』のようなアンビエント・ミュージック的な味わいを持たせつつ、生ギターやピアノ(アイシャムさんが弾いてます)でじっくり哀愁の調べを聴かせるタイプの音楽、と申しましょうか。電子音と生楽器のバランスが絶妙です。

決して主張の強いサウンドではないのですが、CDを聴いているうちに、物悲しいメロディーがリスナーの心にじわーっと浸透していくような、そういう音楽です。CD2曲目の”Drive to Mexico”とか、6曲目の”ICE Raid”あたりは切なくて泣けますよ。

ドラマに必要とされている感情の揺れ動きを的確に描き出し、だからといって過剰におセンチな雰囲気にはしない絶妙なバランス感覚の音楽。社会派群像ドラマの音楽はかくあるべし、という感じのサウンドトラックです。オススメ。

そういえば、アイシャムさんは12日にLAのThe Baked Potatoというライブハウス(?)でライブを演ったそうです。この方は腕利きのジャズ・トランペット奏者ですからねー。いつかこの目でナマ演奏を見て(聴いて)みたいもんです。

アイシャムさんのトランペットの腕前については、そのうち書かせて頂きます。

『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マーク・アイシャム
品番:GNCE7056
定価:2,625円

  

96時間

先日の『30デイズ・ナイト』に続いて、日本公開前から楽しみにしていた『96時間』(08)を観てきました。

サエない生活を送っているCIAの元工作員ブライアン(リーアム・ニーソン)が、最愛の娘キム(『LOST』のマギー・グレイス)を人身売買組織に誘拐され、娘を取り戻すために非情な追跡者と化すサスペンス・アクションという事で、期待通りの面白さでございました。

何と言っても主役がリーアム・ニーソンというのがいいですな。こういう「家族を守るために闘う男」といえばハリソン・フォードの十八番なわけですが、あえてアクション俳優というカテゴリに入らないニーソンをキャスティングするのが粋というか何というか。アメリカのプロデューサーではちょっと思いつかない人選かもしれません。

しかし、何があっても沈着冷静そうなニーソンだからこそ、愛娘を取り戻すためにどんな無茶をやっても、演技に説得力があるわけです。ハリソン・フォードとかキーファー・サザーランドあたりがこういう役を演じると、過去に演じたキャラの印象が強くてリアリティが感じられなくなってしまう恐れがあるのだけれども、演じるキャラクターにまだ色がついていないニーソンだと、ブライアンの親バカぶりや「俺の邪魔をする奴は誰だろうと全員ブッ殺す!」的な過激な暴走にも深みやリアリティが出るわけです。オトーサンにここまでしてもらえたら、娘も本望だろうなぁ、と思ったりして。

演出もスピーディーでよい感じです。回想シーンとか、誘拐先での娘の描写、娘の安否を気遣う母と義父の描写など、映画の流れを悪くするようなシーンは一切ナシ。「娘が自分の全て」というブライアンの「非情なまでにエモーショナル」な描写だけで、93分の上映時間を一気に突っ走ります。立ち塞がる敵を3秒で瞬殺する「リーアム拳」も破壊力抜群。ニーソンは殺陣だけでなく、肉弾戦もイケるという事が判明しました。彼は身の丈2m近くあるので、格闘戦も絵になるのです。『アルティメット』(06)を監督したピエール・モレルの演出も、今回はさらにテンポがよくなってます。

ブライアンの別れた妻レノーア役はファムケ・ヤンセン。ファムケ姐さんは長身なので、「ニーソンと並んでも身長差が出ない女優」という点がキャスティングの決め手になったのではないかと思います。あとパンフには載ってませんが、レノーアの再婚相手(=キムの義父)を演じているのは『24 -TWENTY FOUR-』のジョージ・メイソン役でおなじみザンダー・バークレーでした。ま、見せ場がほとんどない役どころでしたが・・・。

音楽担当はナサニエル・メカリー。本作以前にリュック・ベッソンがプロデュースしたガイ・リッチーの怪作『リボルバー』(05)の音楽を手掛けたので、それが今回の起用に繋がったと思われます。この人、これから担当する作品によっては結構ブレイクしそうな気がするのですが、どうでしょう。

今回は「静かに燃える」タイプのスコア、というのでしょうか。オーケストラ・ミーツ・エレクトロニカといった感じで、ヨーロッパ的なカッコよさがありますな。サウンド的にはアトリ・オルヴァルッソンの『バンテージ・ポイント』(08)に近いかな?民族音楽色はありませんが、電子音の使い方とか、リズムの構成に近いものがあるような印象を受けます(ニカ色は本作の方が強め)。

挿入曲ではLupe FiascoをフィーチャーしたJoy Denalaneの”Change”が出色です。カーティス・メイフィールドの”I Want to Go Back”をサンプリングしているのですが、これが最高にソウルフルでイカス。劇中ではホリー・ヴァランス演じる売れっ子歌手シーラの持ち歌、という設定になってます。

キムのおバカな友達アマンダが、パリのアパルトマンに着くや否や大音量でプレイするのはThe Hivesの”Tick, Tick Boom”。そしてエンドタイトルで流れるのが、Ghinzuの”The Dragster Wave”。ラストでベタなスローバラードとか流さないところにセンスの良さを感じさせます。日本映画だったら絶対(以下略)。

映画本編同様、サントラもクールかつスタイリッシュな感じです。ハンス・ジマー一派の音が好きな方にオススメ。輸入盤で入手可能ですのでぜひ。

  

30 days of night

109シネマズ富谷でヴァンパイア・ホラー『30デイズ・ナイト』(07)を上映中という事で、
富谷はウチから遠いしなぁ、観に行こうかなぁ、どうしようかなぁ悩んだのですが、
結局観に行ってきちゃいました。

30日間太陽が昇らなくなるという、「極夜」のシーズンを迎えたアラスカ州の小さな町
バロウ。そこへ「人間狩り」にやって来たヴァンパイアご一行様相手に、町の住人が
壮絶なサバイバルを強いられる事になる、というホラー映画でございます。いわゆる
ジョン・カーペンターが得意とする「空間限定型スリラー」というジャンルに該当する
でしょうか。個人的には、期待を裏切らないなかなかの佳作でした。

ヴァンパイアが町を停電させたため、全編ほぼ真っ暗闇の中で人間狩りの地獄絵図が
繰り広げられるのですが、「真っ暗で何も見えねぇよ!」ってな映像が延々続いた
『エイリアンズvsプレデター』(07)と違って、闇の中でも誰が何をやっているのかちゃんと
見えるところが素晴らしい。このへんが監督/プロデューサーのセンスの差なんだろうなぁ。
(ちなみに監督は『ハード キャンディ』(05)のデヴィッド・スレイド、製作はサム・ライミです)
黒と青を基調とした闇の描写、雪の白、血の赤が織りなすダークな色彩感覚も格調
高くてよい感じ。

演出面でもなかなか光るものがありまして、この手の映画に欠かせないゴア描写も
さることながら、思わず息が詰まるような心理的な怖さの煽り方が秀逸。ヴァンパイ
アがいつ、どのタイミングで襲ってくるか分からないし、キャスティングが絶妙なので、
誰が生き残って、誰がいつ襲われて死ぬかも予測がつかない。これが映画にヒリヒリ
した緊張感を持たせていて、(いい意味で)気の休まる暇がない。これがいいんです。

主人公の保安官エバンを演じたジョシュ・ハートネットも、「らしさ」が出ていて良かった
と思います。勝ち目のない戦いに身を投じる悲壮感とか、心ならずもヴァンパイア化
した仲間を手にかけた(しかも斧で斬首だもんなぁ・・・)後の絶望的な表情とか、この
あたりは『ブラックホーク・ダウン』(01)のエヴァースマン役を彷彿とさせます。まさか
ホラー映画で涙腺を刺激されるとは思いませんでしたわ(ラストのシーンで)。

エバンと離婚協議中の妻ステラを演じるのは『悪魔の棲む家』(05)のメリッサ・ジョージ。
薄幸そうな美しさにグッと来ます。『ヴァンパイア 最期の聖戦』(98)ではヴァンパイア・
ハンターの割に前半であっさり殺されたマーク・ブーンJr.(ムサいオッサンのボウ役)が
今回は大活躍。最後に男気溢れる死に様を見せ・・・ようとするんですが、結局失敗して
しまうカッコ悪さがこの人の持ち味かな、と思ったり(笑)。脇役キャラの生き様に注目
してみても面白いですぞ。

さてそんな本作の音楽なのですが、無調音と不協和音、歪んだギター音とエネルギッ
シュなパーカッション演奏で構成された、ブルータルかつバーバリックなサウンド。
メロディーというものが全く存在せず、そもそも始めからメロディーを聴かせようという気が
全くない「音響系」のスコアに仕上がってます。

こういう曲を一体誰が書いたのかと思ったら、ブライアン・レイツェルというこれまた意外な
人選。元レッド・クロスのドラマー、ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』(06)や
『ロスト・イン・トランスレーション』(03)、マーク・フォースターの『主人公は僕だった』(06)の
音楽プロデュース、AIRのサポート・ドラマー、ジェイソン・フォークナー、ロジャー・ジョセフ・
マニングJr.とのバンド「TV EYES」結成など、オシャレ系な印象のレイツェルがまさかホラー
映画のサントラを担当するとは。

音楽的には面白いかもしれないけど、商業的にCD化はキツイだろう・・・と思いきや、実は
サントラ盤が存在していたりします。しかも、マイク・パットンのレーベルIpecacからの
リリース。パットン恐るべし。

アルバムのブックレットには、参加ミュージシャンや使用した楽器の一覧が掲載されて
いるのですが、レイツェルの担当した楽器の数が凄いんですよ、コレが。Sonor Drum Kit、
Boomywang、Englehart Metal Percussion、Monomachine、Syndrum、Circulsonic
Death Tube・・・などなど。楽器の形も音も容易にイメージ出来ません。プリペアード系
の楽器を多く使っているのがポイントかな、と思います。

アルバム単体で聴くにはかなりツライ音楽ですが、映画のヴィジュアルには見事に
ハマってます。ま、非常にクセのあるサウンドなので、強くはお勧めできませんが・・・。

  

トランスポーター3 アンリミテッド

先週仕事で忙しくて観に行けなかった『トランスポーター3 アンリミテッド』(08)をようやく鑑賞。

個人的にこのシリーズは嫌いじゃない(というか、好き)なので、それなりに楽しんで観たのですが、なぁぁんか今回は乗り切れない部分がありました。ま、前作『トランスポーター2』(05)のやりすぎアクション描写が面白すぎたというのもありますが、見せ場でハジケっぷりがちょっと足りなかった印象です。

それでもジェイソン・ステイサムは相変わらず頑張っているし(スーツ姿のままチャリンコでアウディをチェイスするシーンが出色)、カースタントもイカすのに何でかなー、と思ったのですが、やっぱり既にあちこちで書かれているように「ヒロインに魅力がない」という部分が大きいようです・・・。

何というか、ハスッパなの。聞けば今回のヒロイン・ヴァレンティーナを演じたナターリア・ルダコワは、NYのヘアサロンで美容師として働いていたところをリュック・ベッソンにスカウトされて、演技のレッスンを6ヶ月受けてこの映画のオーディションに参加して役をゲットしたそうな。ま、早い話がベッソンにナンパされたという事ですかね。ホントにベッソンはこういうハスッパ系の女子とかモデルが好きなんだなー、と改めて思いました。

ステイサム演じるところのフランク・マーティンは、己に厳しいルールを課して仕事をこなす、ある意味「ストレート・エッジ」な男なので色恋沙汰もNGなんですが、今回はそのルールを破ってしまいます。だから今回のヒロインは「あの禁欲主義的なフランクですら虜にしてしまう程の美貌の持ち主」でなければいけないと思うのですが、ルダコワさんではちょっとその点で説得力に欠けるかな、と。

前作で色っぽい人妻(アンバー・ヴァレッタ)の甘ーい誘惑にギリギリのところで耐えたフランクなのに、何故この人で?? ・・・と思ってしまうんだなぁ。1作目のスー・チーも可愛かっただけに、なおさらそう思うのです。そこらへんがちょっと残念な3作目でございました。ま、ベッソンさんも映画を作る時は公私混同も程々にお願いしますぜ、って感じです。

しかしそのマイナス面を補ってくれるのが、我らがロバート・”ティーバッグ”・ネッパーの怪演でございます。『プリズン・ブレイク』のねちっこい爬虫類的な演技ともひと味違った、洗練された悪役演技を見せてくれます。ネッパーさん、売れっ子になって嬉しい限りです。スーツも似合うし、意外な事に今回はなかなかカッコイイです。日本語吹替えも若本規夫氏で決まりだぜ。

さて本作の音楽はというと、前作に続いてアレクサンドル・アザリアが担当してます。1作目の音楽担当としてクレジットされているのはスタンリー・クラークですが、アザリアもREPLICANT名義で楽曲提供しているので、実質全シリーズの音楽を担当している事になります。例の耳に残るテーマ曲も使われていて、アクション・スコアとしても聴き応えアリ。ハリー・グレッグソン=ウィリアムズとか、ブライアン・タイラーの音楽をフランス風に味付けするとこんな感じになるのかな、というタイプのサウンドです。

サントラ盤はフランスのWagramというレーベルから発売になっていますが、ランブリング・レコーズさんが日本での販売を担当しています。なので、地方都市のCDショップだと入手困難なフランス盤も比較的容易に入手可能です。

Eveが歌うエンドクレジット曲”Set it on Fire”やHoly Golightlyの”Wherever You Were”、Tricky、Birdy Nam Nam、Benjamin Thevesの楽曲も収録した全17曲。とりあえずアクション・スコア愛好家の方は押さえておきたい一品かと。

『トランスポーター3 アンリミテッド』オリジナル・サウンドトラック
音楽:アレクサンドル・アザリア
品番:RBCX-7360
定価:2,625円