4月のBANGER!!!コラムの補足 – 『クリミナル 2人の記憶を持つ男』の音楽はなぜシンセスコアになったのか

ムービープラスで『クリミナル 2人の記憶を持つ男』(16)の放送があるということで、BANGER!!!で音楽紹介のコラムを書きました。

凶悪犯に“感情”は生まれるのか?『クリミナル 2人の記憶を持つ男』極悪ケヴィン・コスナーの胸熱サスペンス
https://www.banger.jp/movie/76502/

この映画、スコア作曲のブライアン・タイラーがシンセでなかなか面白いことをやっていたので、機会があったら是非音楽をご紹介したいと考えていました。
プレス枚数はそれほど多くなさそうでしたが、サントラ盤は輸入盤で出ていたものの国内盤は発売されず。現在は廃盤になっていて配信でのみ入手可能といった感じです。
そういえばこれだけ豪華スターが共演しているのに、日本での劇場公開規模もそれほど大きくなかったような記憶もあります。面白いのになぁこの映画。

音楽の重要なポイントについてはBANGER!!!のコラムでほぼご紹介しましたが、例によってもう少し補足すべきネタが2,3あるのでブログで書かせて頂きます。

まず本作の音楽がなぜシンセスコアになったのかという件。


BANGER!!!のコラムでは「アリエル・ヴロメン監督とタイラーとの打ち合わせで”いつもと違う音楽で行こう”という話になった」と書きましたが、ほかにも理由はあります。
タイラーはこの映画の数年前くらいからEDMプロジェクトのMadsonikを始動させていて、2014年から2017年くらいまで結構積極的にEDM方面で活動していたんですね。

自身がスコア作曲を手掛けた映画でも、『ミュータント・タートルズ』(14)にKill the Noiseと合作した”Shell Shocked”や”Dat Boom”を提供したり、『トリプルX 再起動』(17)にもKill the Noiseとトム・モレロと合作した”Divebomb”や”Take It to the Top”のようなMadsonikの書き下ろし曲を提供していた。


Madsonikの活動を通して電子音楽にのめり込んでいた時期だったから、『クリミナル』もほぼ9割がたシンセスコアになって、エンディングテーマ曲もローラ・マーシュと合作したMadsonikの”Drift And Fall Again”になったというわけです。

“Drift And Fall Again”の歌詞についてはリリックビデオをご覧ください。

で、『クリミナル』のスコアにいつものタイラーのようなフルオケスコアを期待したリスナーは、「ただ電子音がブインブインなってる音楽」というような雑な評価を下しがちでしたが、BANGER!!!のコラムで書いたとおり、リバーブのエフェクトを使って、極悪人の主人公に移植された善人の”記憶”が去来する様子を描く面白い試みを行っていると。
そしてサントラをよく聴くと、ちゃんとテーマ曲のモティーフが存在しているんですね(映画の序盤、ケビン・コスナーが移送されるシーンで、チェロの擦弦音を加工したような音で演奏されている)。そしてこのモティーフは映画の終盤でドラマティックに演奏される。
もしそれに気づかず前述のリスナーが「ただ電子音がブインブインなってる音楽」と評したのならば、「サントラをちゃんと聴いていないんじゃあないですか?」とワタクシは申し上げたい。

荒削りなようでいて、しっかり作り込まれたシンセスコアではないかと思います。

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