The Men Who Stare At Goats

The Men Who Stare at Goats

それにしても『ヤギと男と男と壁と』とは、某お笑い芸人もケッタイな邦題をつけてくれたもんです。タイトルを聞いただけでは何が何だかよく分からないし、そもそも言いにくいったらありゃしない。原作本の邦題と英語タイトルの直訳を合わせて『実録!アメリカ超能力部隊:ヤギを見つめる男たち』みたいな感じでよかったと思うのですが。

吹替えとか宣伝部長とか日本語タイトルの命名とか、そろそろお笑い芸人を洋画に干渉させるのはやめて頂きたいなぁ。

ま、それはさておき。映画本編の方はなかなか面白かったです。前半は超能力部隊発足の過程を描くオフビートなコメディ、後半は超能力を間違った方向に利用しようとした米軍及び事実を隠蔽するアメリカの社会風刺ドラマという感じ。題材的には相当ヘンなお話ながら、殊更おバカ映画に仕立てなかったのがよかったかな、と。

ジョージ・クルーニーがユアン・マクレガーに向かってジェダイの講釈を垂れるとか、『アバター』(09)の暴れん坊大佐・スティーヴン・ラングにピースフルな准将役を演じさせるとか、楽屋オチ的なネタが多いのだけど、『オーシャンズ』シリーズと違ってこの映画だと笑えてしまうのが良いところ。なぜなら皆さんトボけた役を大真面目に演じているから。『オーシャンズ』は仲間内だけで楽しんでる感じがして、どうも好きになれないんだなー(でもデヴィッド・ホルムズの音楽は好き)。

キャストではクルーニーが実にいい味。あの濃い顔と眼で「キラキラ眼力」なんて大真面目にやってくれるもんだから、つい笑ってしまう。ニューエイジ思想にどっぷり浸かったジェフ・ブリッジスのヒッピー演技もハマっていて可笑しい。『ビッグ・リボウスキ』(98)のデュード役を彷彿とさせます。1シーンのみながら、ケヴィン・スペイシーが見せるイタコ演技もナイスでした。

音楽は『マイレージ、マイライフ』(09)のロルフ・ケント。『ハンティング・パーティー』(07)のような一部例外を除き、コメディタッチの作品で活躍する人なので、イラクが舞台とはいえユルい感じのスコア。トーマス・ニューマンなら、もうちょっとトンがった音楽にしていたかもしれません。

サントラはiTunesのダウンロードのみの取り扱い。スコアの収録時間は35分弱で、デジタル・ブックレット付き。劇中使われたボストンの”More Than A Feeling”とかビリー・アイドルの”Dancing With Myself”は未収録なので、これらは別途お買い求め下さいという事で。

ちなみに「キラキラ眼力」ですが、原語で”the sparkling eye technique”と言っていたと思うので、「キラキラ」は実に的を射た翻訳と言えるでしょう。いい感じにユルい語感も映画のノリと合ってるし。