シャーロック・ホームズ(映画について)

去る1月12日、『シャーロック・ホームズ』の完成披露試写に友人と行ってきました。

ブログに書こう、書こうと思っていたのですが、その後サントラ盤ライナーノーツの執筆やら『17歳の肖像』の試写やらFOZZYの製作でモーレツに忙しくなってしまったので、遅くなってしまいました。どうもスイマセン。

さて実写ホームズというと、以前NHKで放送していた『シャーロック・ホームズの冒険』のジェレミー・ブレットのイメージが強いので(吹替えは露口茂氏)、「ロバート・ダウニー・Jr.がホームズ役でワトソン役がジュード・ロウ、監督がガイ・リッチー」と聞いた時には、そりゃ人選がファンキーすぎるんじゃないかと思いましたが、いざ本編を観てみると、思いのほか違和感がない。こういうホームズ映画もアリだな、と納得して観られました。

まぁ確かに、かなり大胆に原作の世界観を脚色しているので、「こんなのホームズじゃない!」と思う人もいるかと思いますが、僕は割とすんなり映画の世界観に入っていけたクチです。

それに、数年前にはもっと奇抜な映画がありましたし。あのアラン・クォーターメインとトム・ソーヤーとネモ船長と透明人間とジキル博士とドリアン・グレイとミナ・ハーカーが戦隊ヒーローの如く集結して、悪の軍団をブチのめすやつ。そう、『リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い』(03)ですね。アレに比べたら本作の脚色はカワイイもんです。

それにしてもダウニーJr.はいい役者ですな。「頭脳明晰な奇人」というエキセントリックなキャラを愛嬌たっぷりに演じているところとか、説得力のある演技が素晴らしい。彼は目鼻立ちの整ったかなりの二枚目だと思うのですが(70年代のアル・パチーノ風か?)、最近のヤワなイケメン俳優にはない内面的なタフさとか危うさ、人生の辛酸を舐めて体得した(?)シニカルさがあって実にカッコイイです。ゴールデン・グローブ賞受賞はダテじゃない。

原作でモリアーティ教授を滝底に叩き落とした「バリツ」と思しき我流の格闘術も見られるし、”武闘派ホームズ”のシークエンスも見せ方がなかなか面白いです。

ダウニーJr.がホームズを演じるとなると、ワトソン役にもそれ相応に華のある役者をアテないとバランスが取れないわけで、そういう意味ではジュード・ロウのキャスティングも正しい。奔放なホームズとは対照的に、なまじ常識人であるがゆえに背負ってしまう「翳り」のようなものがうまく出てました。とりあえず、悪漢をヘッドロックでシメ落とすワトソンは初めて見ました。イカす。

で、今回の悪役はモリアーティ教授・・・ではなくて、黒魔術を操ると噂される貴族のブラックウッド卿(筆者ご贔屓のマーク・ストロング)。ホームズの小説ってこんなオカルトじみた内容だっけ? と思うかもしれませんが、物語はホームズが科学的根拠からブラックウッド卿の黒魔術のトリックを暴いていくという展開なので、悪魔とか幽霊とか非現実的なものは出てきません。その点はご安心を。

ヒロイン役は原作の『ボヘミアの醜聞』に登場したアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)なんですが、時系列的にあのエピソードの「その後」という設定になっている様子。原案・製作のライオネル・ウィグラム曰く「マタ・ハリのような女スパイとして彼女を思い描いた」との事なのですが、「峰不二子的キャラ」と言った方が日本人には分かり易いでしょう。キャラのポジション的にはあんな感じです。

サントラ盤は今日発売になったはずなのですが、話が長くなってきたので今回はこのへんで。

(つづく)