2016年のごく私的サントラ・トップ10を選んだら、原稿締め切り日の朝みたいになっちまったの巻

今年も残すところあと僅かということで、
サントラブログの締めくくり的なネタを投稿させて頂きたいと思います。
なおブログタイトルの元ネタは、ボビー・ギレスピー選曲のコンピ盤のアレです。

映画音楽ライターであるところのワタクシが選ぶ、
ごく私的な音楽のよかった今年の映画(=サントラ盤)10選ということで、
「今年」というのをどう定義すべきか毎年悩むのですが、
「2016年に日本で公開になった映画」
…とさせて頂きたいと思います。
それゆえ海外では2015年公開だった作品が入っていたり、
逆に海外では今年公開されたけど、
日本では来年公開の映画は入っていなかったりしますが、
その点は何卒ご了承下さい。

 

その1:二ツ星の料理人(スコア盤)

Burnt(Score)

このスコア盤は気に入ってかなり聴きました。
ライナーノーツ執筆の仕事が終わってもよく聴きました。
ロブ・シモンセンはマイケル・ダナさんの事実上のお弟子さんということで、
『(500)日のサマー』(09)あたりから注目していたのですが、
『アデライン、100年目の恋』(15)の音楽で「この人はすごい」と思って、
今回の『二ツ星の料理人』で彼の音楽にぞっこん惚れ込みました。

マックス・リヒターとかダスティン・オハロランにも通じる、
モダンなポスト・クラシカル系のサウンドを作る人だと思います。
1月公開の『Nerve』(16)ではエレクトロニカなスコアを聴かせてくれますよ。

関連記事:優雅でポップでメロディアス、隠し味にはちょっとした緊張感。 映画『二ツ星の料理人』の音楽

 

その2:ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

freeheld

何だか薄~い感じの邦題がついてしまいましたが、
これ昨年アメリカで公開された社会派ドラマ『Freeheld』(15)ですね。
音楽はハンス・ジマーとジョニー・マーの二人。
『インセプション』(10)の時と違って、
ジョニーはゲスト・ギタリストではなくスコアの作曲にも関わっているのがポイント高い。
ジマーさんのシンセ・サウンドの中で、
ジョニーのギターがウィンウィン鳴っているだけでもワタクシは幸せです。

 

その3:世界一キライなあなたに(スコア盤)

me-before-you-score

スコア盤は海外ではダウンロードのみのリリースでしたが、
日本ではランブリング・レコーズさんの粋な計らい(?)でスコア盤がCDリリースされました。
しかもライナーノーツを担当させて頂けて、
アームストロンガーであるところのワタクシ大感激でございました。
それにしてもクレイグ・アームストロングの音楽は流麗でイイ…(恍惚)。

アームストロングといえば『スノーデン』(16)の音楽も担当してるけど、
こちらの映画の通常版サントラはCDで発売されたものの、
アームストロングの「オーケストラル・スコア・アルバム」はCD化されない模様。
このへんの違いですよ、このへんの。
ランブリングさんの心意気に感謝。

関連記事:クレイグ・アームストロングのファンに朗報!『世界一キライなあなたに』の”スコア盤”が発売されます!

 

その4:アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

alice2

ジョニデのドロ沼離婚騒動もあったりして、
映画としてはいささかコケてしまった『アリス』続編ですが、
ダニー・エルフマンの音楽はクオリティ高かった。
前作のメインテーマを踏襲しつつ、
アリスのサブテーマや赤の女王のテーマ、
そして何よりマッドハッターのテーマを大幅に発展させた、
正統な進化を遂げた『アリス』音楽でした。
エルフマン自身が「プロコフィエフにインスパイアされた」と語るタイムのテーマもいい。
この映画は監督がティム・バートンではないので、
『時間の旅』の曲はティム・バートン&ダニー・エルフマン映画音楽コンサートで演奏されることもないのかもしれませんが、
エルフマニア的には前作同様に愛おしいサントラであります。

関連記事:『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』のサントラ盤はオモチャ箱の中を探るように聴くのがいいと思うの巻

 

その5:ボーダーライン

sicario

新作『メッセージ』(16)もゴールデングローブ賞の最優秀作曲賞候補に上がっているヨハン・ヨハンソン。
『ボーダーライン』(15)こと『SICARIO』の音響系スコアもすごかった。
麻薬戦争ドラマの音響系サウンドといえばクリフ・マルティネスの『トラフィック』(00)も名作でしたが、
『ボーダーライン』の音楽は『トラフィック』よりもドライでヘヴィ、そして悲痛な音になってます。
メロディアスというわけではないのですが、
重低音を効かせた音響系スコアは忘れがたいインパクトがありました。

 

その6:ルーム

room

ワタクシは何でスティーヴン・レニックスがアカデミー賞の最優秀作曲賞の候補から外れたのか納得いきません。
「ピアノ」と「弦」で「母と子」の繋がりを表現する彼の音楽は巧いなーと思うし、
映画の中盤でレニックスのミニマリスティックなスコアから、
This Will Destroy Youの轟音シューゲイザー曲”The Mighty Rio Grande”に切り替えることで、
ジャックが閉ざされた空間から外に脱出した時の”開放感”を観客に体感させる手法もお見事と言うしかない。
トレンブレイ君とブリー・ラーソンの演技に注目が集まりがちだけど、
この映画の音楽(サントラ)はもっと評価されてしかるべきだと思うなぁ。

関連記事:弦とピアノの音色が母と子の絆を描き出す…。映画『ルーム』の深遠なる音楽世界

 

その7:イット・フォローズ

itfollows

『ザ・ゲスト』(14)の時より洗練されたマイカ・モンローたそに惚れましたが、
それ以上にDisasterpeaceの音楽にも惚れました。
チップ・チューンの音楽で人気を博したミュージシャンらしく、
80年代カーペンター映画風のシンセ・スコアを全編に渡って聴かせてくれるのですが、
これが恐ろしいのに電子音がなかなか心地よかったりするから面白い。
2010年代になってこういうホラー映画の音楽が聴けるとは思いませんでした。

 

その8:The Homesman

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2014年の映画ですが、
今年の京都ヒストリカ国際映画祭で上映されたのでランクイン。
…というか、この映画のマルコ・ベルトラミの音楽が本当に素晴らしいので、
このブログに目を通して下さった方には是非サントラ盤を聴いて頂きたいのです。
「風吹き荒ぶ荒野」を音楽的に表現するため、
スコアの屋外レコーディングを敢行したり、
異色の楽器ウォータータンク・ピアノやエオリアン・ハープを自作するなど、
マルコさんは盟友トミー・リー・ジョーンズのために凝りに凝った音楽を作っています。
詳しくはこちらの動画をご覧下さい。

 

その9:レジェンド 狂気の美学

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自分でも意外でしたが、スコア盤でなくコンピ盤がランクインです。
3曲収録されていたカーター・バーウェルのスコアがスムース・ジャズ風(…という表現でいいのだろうか?)でいい味出してたのと、
映画本編で使われた懐メロがモロにワタクシ好みだったのが決め手となりました。
ティミ・ユーロになりきったダフィーのヴォーカル曲もよかったですね。

CD2枚組とはいえ、
ディスク2は劇中未使用曲多めのほとんどインスパイア盤的な内容でしたが、
ディスク1はちゃんと劇中で使われた曲+バーウェルのスコア3曲で構成されていたので、
物語の世界観を壊さないサントラになっていると思います。

関連記事:『レジェンド 狂気の美学』のサントラ盤を検証してみたの巻

 

その10:コウノトリ大作戦!

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『手紙は憶えている』(15)で鬱スコアを書き下ろしたマイケル・ダナさんが、
一転してノーテンキで賑やかなスコアを弟ジェフさんと一緒に作り上げた痛快作。
全体的にガチャガチャした音楽だけれども、
家族愛や友情を描いたメロディアスなテーマ曲もじっくり聴かせてくれています。
ダナ兄弟はワーナーアニメの音楽をよく研究してるなぁと思わせる箇所も多々あって、
結構作り込んであるスコアです。

関連記事:古き良きワーナーアニメのような賑やかさ。マイケル&ジェフ・ダナ兄弟による『コウノトリ大作戦!』の音楽

 

…とまぁこんな感じでしょうか。
アレックス・ソマーズの『Captain Fantastic』(16)とか、
アベル・コジェニオウスキの『Nocturnal Animals』(16)、
ダスティン・オハロラン&ハウシュカの『Lion』(16)など、
たぶん名盤だろうというサントラは現時点でまだ入手しておらず、
映画の公開も来年なので、
これらの作品については別の機会に何か書かせて頂きます。

 

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