LOST:Season 4の音楽

シーズン4の製作時期は、例のアメリカ脚本家組合のストライキがあったため、1シーズンの
話数が14話に短縮されるという事態に陥ったそうなのですが、これがプラスに働く事もあったり
するので、世の中何があるか分かりません。

「シーズン6でドラマを完結させる」とプロデューサーが決断した事から、どうやら話をムダに
先延ばしをする必要がなくなったようですな。シーズン3の最終話で登場した「フラッシュ
フォワード」を積極的に活用し、島を脱出した生存者の「未来の姿」を描き、恐らく今まで
ネタを温存していたであろう島の秘密も惜しげもなくバンバン露出させ、ドラマ展開が断然
スピーディーになりました。ゴチャゴチャしていた人間関係も割と整理されてきたし、何となく
薄れかけていた『LOST』熱が、自分の中で蘇ってきたシーズンでございました。

今回はジアッキノのスコアもかなりイイ感じです。「『LOST』のスコアは音だけ聴いてもあん
まり面白いタイプの音楽じゃないよねー」という声をよく聞くのですが、いやいやそんな事は
ありませんって。特に今回はメロディアスな楽曲が比較的多かったため、個人的にはファー
スト・シーズンに勝るとも劣らない名盤ではないかと思ったぐらいで。

ドラマ系スコアでは、何と言っても第77話「定数」のクライマックスで流れる”The Constant”が
出色。デズモンドとペニーの一途な愛を美しく彩る名曲です。ちなみにジアッキノはこの曲で
エミー賞にノミネートされました。

あと、今回のアルバムでは”Lost Away — Or is It”や”Nadia on Your Life”など、サイードの
テーマの哀愁のメロディーが結構目立った使われ方をしています。そういえばシーズン4は
彼も結構目立った活躍をしていましたねー。

しかし、やはり特筆すべきはシーズン最終話”There’s No Plece Like Home”(「オーシャニック
6」、「基地オーキッド」、「帰還」の3話)のスコアでしょう。銃撃戦あり、爆弾解体サスペンスあり、
貨物船からの脱出劇あり、帰還を果たす感動のドラマあり・・・と、ジアッキノのスコアもドラマを
盛り上げまくり。ジャックたちが島から生還するシーンのスコア”Landing Party”は、シーズン1の
“Parting Words”に匹敵する美しさ。やっぱりこのドラマの音楽はすごい。

・・・というわけで、シーズン4のサントラ盤はランブリング・レコーズさんから8/26発売です。
ファンなら買いの逸品。フルオケ音楽の深い味わいをご堪能下さい。

『LOST Season 4』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE7062
定価:2,625円

 

LOST:Season 3の音楽

さてさて、13日の午後に東京から戻って参りました。映画のマスコミ試写が2本あったの
ですが、これから原稿を書くので、詳しくは落ち着いてからまた後ほど。本日は『LOST』の
シーズン3について少々。

・・・などと書いてみたものの、実はあまりシーズン3は印象に残っていなかったりします。

何というか、前半から中盤あたりまでドラマのテンポが悪くて、ドラマを見ながら「早くメインの
話を進めて下さいよー」と何度思った事か・・・。個人的にはなかなかキツいシーズンでした。
聞けばシーズン3は中盤から視聴率の低下が顕著で、シリーズ最低の数字を記録した
そうで、ま、それも無理ないかな、と思ったりするわけです。

謎を次から次へと提示する割には、解決される要素が少ない。フラッシュバックで見せる
登場人物たちの過去の繋がりも、何だかこじつけっぽい感じになってきたし(ロックの父親が
実はあの人と因縁があった、という展開はどうなんだろう)、第63話「エクスポゼ」に至っては
本筋と全然関係ないエピソードだったし、何だか「ドラマの引き延ばし」感が気になってきたのも
このシーズンでした。

と、まぁ間延びした印象を受けるシーズン3なのですが、生存者たちと他のものたちが全面対決
する後半からかなり盛り返してきました。そしてシーズン最終話で披露するあの手法。一瞬、
何があったのかと思いましたが、少なくとも夢オチとか「実は全員死んでいた」系のオチで片付
ける事はなさそうなので安心しました。ま、今更それをやったら視聴者は間違いなく激怒する
でしょうけれども。

さてシーズン3のサントラ盤なのですが、何とCD2枚組です。そのうちDisc-2はシーズン3の
ラスト3話「グレイテスト・ヒッツ」、「決行」、「終わりの始まり」で使われたスコアが収録されて
ます。なかなかの大盤振る舞い・・・なのですが、CDを聴いて思ったのは、「収録曲が多ければ
いいってもんでもないなぁ」という事でした。ドラマの前半はあまり気を入れて見ていなかった
ので、CDも聴くのはもっぱらDisc-2の方でした。

シーズン3のサントラ盤は国内盤としてのリリースがなかったのですが、これはドラマの
視聴率の落ち込みと、「CD2枚組」という構成に伴う製作費の問題があったんだろうなと
思います。もしこのシーズンが高視聴率で、DVDの稼働率も高かったら、国内盤が出ていた
かも分かりませんけど。

そしてドラマはシーズン4へと進んでいくわけですが、今度のシーズンはドラマ展開がスピー
ディーかつメリハリの効いた感じで実に面白いです。いやー、持ち直してよかったよかった。

(まだまだ、つづく)

  

LOST:Season 2の音楽

というわけで、今回は先日のブログでご紹介した『LOST』の続き。
シーズン2の話でございます。

シーズン1の最終話で、助けを呼ぶためにイカダで島を出たソーヤー、ジン、マイケル、
ウォルトの4人。しかし海上で「他のものたち」に襲われて島の海岸に流れ着き、そこで
815便の後部座席に登場していた生存者たちと対面する事になる、というのが序盤の
展開でしたっけ。

で、その後部座席の人たちというのがロス市警のアナ・ルシア、ヤクザ神父のミスター・
エコー、臨床心理士のリビー、歯科医のバーナードといった割とアクの強い面々だった
わけですが、大半がシーズン2(及びシーズン3の序盤)で死んでしまいましたなぁ。
今も活躍してるのはバーナードぐらいか?先日のシーズン5の放送で、アナ・ルシアが
チラッとゲスト出演してましたが。

個人的にはジャックとソーヤーが気に入っているので、彼らの活躍(あるいは行動)に
特に注目しているのですが、最初のシーズンに比べてソーヤーが徐々にいいヤツに
なりつつあるのが興味深かったです。「斜に構えた皮肉屋だけど、実はいい奴」という、
ドラマ的に一番オイシイ役柄。戦隊ヒーロー物で言うところのブラックのポジションですね。
ジャックとソーヤー、ケイトの三角関係を見ていて『鳥人戦隊ジェットマン』を思い出しました。
あれもレッドとブラックがホワイトを取り合う話でしたからね。

放送当時はそれほどでもなかったのですが、最近TVで覚せい剤事件のニュースを見て
ますと、チャーリーのエピソードが実に興味深いものになってきます。落ち目の芸能人や
ミュージシャンがなぜクスリに走るのかとか、禁断症状はどんなものなのかという描写の
リアルさもさることながら、ドラッグってもんは、せっかく掴みかけた幸せも一瞬でフイに
しちまうものなんだなぁ、と痛感してしまうチャーリーの墜ちっぷりが実に悲しい。

さてシーズン2のサントラは、ライナーノーツの原稿締切が最終話(48、49話)の放送前
だったので、曲タイトルをどうしたものかと死ぬほど悩んだ記憶があります。

“I Crashed Your Plane, Brotha”という曲は「ああ、デズモンドのセリフだなー」と本編を
見ていなくてもすぐ分かったのですが、防護服に身を包んだインマンの登場シーンの曲
“Toxic Avenger”なんて、どんなシーンの曲だか全くイメージ出来ませんでした。「何で
ここで『悪魔の毒々モンスター』の原題が出てくるんでしょうね?」とランブリング・レコーズの
Mさんと話したくらいです。多分、防護服=Toxic=毒々モンスターという言葉遊びだったん
でしょう。余談ですが、『LOST』のサントラは毎回”言葉遊び”の入った曲タイトルが多く、
なかなかレコード会社泣かせ&ライター泣かせな作品でございます。

音楽の雰囲気はシーズン1とほぼ一緒。やや内省的なスコアが増えたかもしれません。
ギターでGrant-Lee Philipsが参加している点が、コアな洋楽ファンにはポイント高いかと。

(まだ、つづく)

『LOST Season 2』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE3068
定価:2,625円

 

LOST:Season 1の音楽

先月からAXNで『LOST』第5シーズンの放送が始まったわけですが、いやーシーズン4も
そうでしたが、なかなか快調な滑り出しじゃありませんか。

映画の場合、その作品が面白いかツマラナイかは最初の20分くらいを見れば大体分かると
言いますが、TVシリーズの場合は第1話・2話の内容や展開で、そのシーズンが面白いか
ツマラナイか判断出来るような気がします。そういう意味では、今回の『LOST』はこれからの
展開に期待が持てそうな感じです。

実はワタクシ、『LOST』のシーズン1と2のサントラ盤にもライナーノーツを書かせて頂いて
おりまして、その関係で『LOST』とは長ーいお付き合いがあったりします。

8/26にランブリング・レコーズさんからリリースになる『LOST:シーズン4』のライナーノーツも
自分が担当する事になったため、先月はシーズン4の音源を聴きつつDVDをレンタルしまくって
延々「おさらい」をしておりました(どの曲がどの話のどの場面で使われたかを再確認する
必要があったので)。

・・・というわけで、シーズン4のサントラ・リリースまでの間に、これまでのシーズンの音楽を
ざざーっと振り返ってみたいと思います。

シーズン1は第1話(いわゆるパイロット版)から凄かった。TVドラマとは思えないほどリアル
だったオーシャニック航空815便の墜落現場のシーンにも驚かされましたが、その場面で流れる
スコア”World’s Worst Beach Party”(←ブラックユーモアのキツいタイトルです)や、謎の
怪物の初登場シーンのスコア”Run Like, Um… Hell”の迫力がまた凄かった。

実は『LOST』の音楽は全編ナマのオーケストラで演奏されてます。やっぱりシンセ・ストリン
グスとフルオケでは、音の厚みや奥行き感が全然違いますね。

基本的にTVドラマの音楽は、予算と製作期間の関係上、シンセを使った打ち込み主体の
スコアになるわけですが、『LOST』のシーズン1ではヴァイオリン26、ヴィオラ16、チェロ10、
コントラバス4、トロンボーン10、ハープ4、ギター3、パーカッション3というかなり贅沢なオケ
編成でスコアを演奏しているのです。

さすが『メダル・オブ・オナー』シリーズでもフルオケ音楽を鳴らしたマイケル・ジアッキノ。
『LOST』でもこだわりのオーケストラ・スコアを聴かせてくれてます。

シーズン1のサントラ盤には『LOST』のメインテーマ”Hollywood and Vines”や「生存者たちの
テーマ」とでも言うべき”Win One for the Reaper”、サンのテーマ”Departing Sun”、ジョン・
ロックのテーマ”Crocodile Locke”など、シリーズを通して使われているメロディーをモチーフに
したスコアが全27曲/65分収録されています。

どれも聴き応えがあるのですが、筆者的にはジアッキノ本人も一番気に入っているエピ
ソードという第23話「迫りくる脅威」のスコア”Parting Words”(ソーヤーたちのイカダが島を
発つシーンの曲)をベストに挙げたいです。

(つづく)

サントラ盤はランブリング・レコーズから発売中。

『LOST』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE3057
定価:2,625円

 

ディズニー presents 『ボルト』

8/1からディズニー映画『ボルト』(08)が公開になります。

ワタクシがマスコミ試写に行ったのは4月22日で、その時はまだ日本語吹替えの
キャストが決まっていなかったのですが、うーん、こういう顔ぶれになるのか…。

個人的には、字幕版での鑑賞をオススメします。なぜかというと、まず主人公のわんこ
「ボルト」の声をアテているのがジョン・トラボルタだから。飼い主のペニーひと筋の一途さ
とか、ボルトのナイーブな一面をあのソフトな声で表現していて実にいい感じなのです。

あと、ノラ猫のミトンズの声をアテたスージー・エスマン(TVシリーズ『ラリーのミッドライフ★
クライシス』の人)の演技がこれまた巧い。ひねくれ者だけど愛嬌があって、意外と親切な
一面も持ち合わせているミトンズのキャラを完璧に表現しています。日本語吹替えを担当
する某女優の声と演技では、ちょっとミトンズの魅力とは違うような気がするんですよねー。
やっぱりこういうキャラは本職の声優さんに演じてもらわないと。

幸い『モンスターvsエイリアン』(09)と違って、東京都内では字幕版が上映されている映画館も
結構多いようなので、ぜひぜひ字幕版でお楽しみ頂ければと思います。

肝心のお話はと申しますと、外の世界を知らないまま、ハリウッドの撮影スタジオの中で
育てられたスター犬「ボルト」の冒険物語ということで、ひと言で申しますと『トゥルーマン・
ショー』(98)のわんこ版という感じです。

「現実世界ではダメダメ犬」のボルトが冒険を通して立派に成長する物語・・・ではなくて、
ドクトクな環境で育てられたボルトが「フツーの犬のシアワセ」を掴む過程を描いた物語でした。
視聴率第一主義のTV業界への風刺なんかは、ドリームワークスのアニメだったらもっと
ブラックユーモアを交えて描いたと思うのですが、そこはディズニー映画。毒気はほどほどに
「愛・友情・優しさ」をテーマした、子供も安心して観られる作品に仕上がっています。

ま、そこに物足りなさを感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、戦闘ヘリや戦車が登場する
劇中ドラマ『ボルト』の気合いの入ったアクション描写は大人も結構楽しめるのではないかと。
悪役のマッド・サイエンティストの声はあのマルコム・マクダウェルだし。

TVディレクター役が『アクターズ・スタジオ・インタビュー』のジェームズ・リプトン氏っていうのも
異色の配役です。言われないとなかなか気付かないなー、コレは。

さて本作の音楽はジョン・パウエルが担当してます。作曲時期が『ハンコック』(08)と重なって
いたのか、使用する楽器(ギター、ダルシマー、チェレスタ、ハーモニウム等)の構成にいくつか
共通点が見受けられます。とはいえ、アクション・スコアでは打楽器を鳴らしまくり、ドラマ・スコア
では流麗なメロディーで聴かせる、というパウエル節を存分に楽しめるのでなかなかよい感じです。

劇中ドラマ『ボルト』のアクション・シーンの音楽などは、ほとんど『ジャンパー』(08)とか
『Mr. &Mrs.スミス』(05)のノリで、子供向けアニメの音楽とは思えない仕上がり。これが
なかなか聴き応えがあるのですが、残念なのはアクション・スコアの一番オイシイ部分が
アルバムに収録されてないんですよね・・・。これだけは何とかしてほしかった。

サントラにはジョン・トラボルタとペニー役のマイリー・サイラスが歌う主題歌”I Thought I Lost
You”が収録されていますが、これがまたいい曲なんだな。トラボルタの声が若い!そして相変わ
らず歌が巧い! この曲が流れるエンドタイトルの映像も可愛らしいアニメーションに仕上がって
いるので、映画が終わっても席を立たずに曲とアニメを楽しんで頂きたいと思います。

国内盤はエイベックスから本日発売。歌詞・対訳もついているのでお買い得です。
ジャケットも日本盤の方が可愛らしい感じですしね。

『ボルト』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジョン・パウエル他
品番:AVCW-1235
定価:2,600円