BANGER!!!で書いたトレント・レズナー&アッティカス・ロスの映画音楽コラムの補足的なお話。

先日、BANGER!!!でトレント・レズナー&アッティカス・ロスの映画音楽に関するコラムを書きました。

2度目のアカデミー賞受賞なるか!? トレント・レズナー&アッティカス・ロスの映画音楽仕事を振り返る
https://www.banger.jp/movie/55647/

個人的には『この茫漠たる荒野で』(20)のジェームズ・ニュートン・ハワードに作曲賞を獲ってもらいたいのですが、アカデミー賞は「無冠の帝王にはなかなか賞をくれない(例:トーマス・ニューマン)」「一度作曲賞を獲った人にも、割とすぐにまた賞を授与する(例:グスターボ・サンタオラヤ、アレクサンドル・デスプラ)」という傾向があるので、それを考えると今回もトレント・レズナー&アッティカス・ロスが有力かなと思います。

そんなわけで、当方のブログでは字数の都合でBANGER!!!のコラムで書けなかったネタを少し補足させて頂きます。

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『ドロップ・ゾーン』の長尺版サウンドトラックアルバムが発売になるというお話

以前ザ・シネマで『ドロップ・ゾーン』(94)の放送があった時にサントラの話をツイートした記憶があるのですが、「エクスパンデッド盤が出ないかなー」という我が願いが届いたのか、単にそういうリリース計画がもともとあったのか、Quartet Recordsからめでたく長尺版サウンドトラックアルバムが発売になります。

『ドロップ・ゾーン』のサントラは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのテーマ曲「彼こそが海賊」の原型とも言える曲が収録されているので、以前からマニア人気の高いアルバムでした。
監督のジョン・バダムはアーサー・B・ルビンスタインとのコラボで知られていましたが、『バード・オン・ワイヤー』(90)と『アサシン 暗・殺・者』(93)とこの映画で3回ジマーさんとコラボしていたんですよね。『アサシン』も長尺版サントラの発売が待たれます(個人的に好きな作品なので…)。

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最近買ったサントラ&洋楽アルバム/『夜霧のマンハッタン』『テスラ エジソンが恐れた天才』「Rosa Morta」「Stage Whisper」

コロナ禍が一向に収束しないどころか、事態が悪化している印象すら受ける今日このごろ。外食に行かず、仙台市中心部にも全く出掛けない生活を続けて1年以上になります。
その結果、外食費と交通費の負担が減ったので、浮いたお金をサントラや洋楽アルバムの購入費に充てることが出来るようになりました。

いままでだったら「この限定盤、興味があるけどお値段高めだなぁ」と逡巡していたサントラも即買い。
内容が気にはなっていたけど、あと一歩のところで踏ん切りがつかず購入を見送っていた洋楽アルバムも遅まきながら購入。外出自粛生活のささやかな楽しみといったところでしょうか。
そしてどのアルバムも個人的に「当たり」だったので、その一部を簡単にご紹介したいと思います。

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ハンス・ジマー式ドキュメンタリー音楽の世界を堪能できるアルバム 『リビルディング・パラダイス 楽園に戻るまで』

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、ドキュメンタリー映画『リビルディング・パラダイス 楽園に戻るまで』(20)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は『ワンダーウーマン 1984』(20)のハンス・ジマーと、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18)のローン・バルフ。

この映画はナショナル・ジオグラフィックのチャンネルで確か昨年の11月くらい(だったと思う)に放送されたぐらいで、劇場公開にもなっていないし、CSのほかのチャンネルでも放送していないような気がしたのですが、ランブリングさん的には「それでもこの作品は是非リリースしたい」という思いがあったようです。「ジマーさんの音楽が素晴らしいから」ということなんだろうなと思います。

実際、ランブリングさんはジマーのドキュメンタリー系サントラをいくつかリリースしていて、『プラネット・アースII』(16)と『Seven Worlds One Planet』(19)は大変よいアルバムでした。

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アカデミー賞作曲賞ノミネートは伊達じゃない! 『この茫漠たる荒野で』のジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽が素晴らしいというお話。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、NETFLIXで配信中の映画『この茫漠たる荒野で』(20)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は『ファンタスティック・ビースト』シリーズ(16,18)や『ナイトクローラー』(14)のジェームズ・ニュートン・ハワード(以下JNH)。

まずサントラ盤の概要については、BANGER!!!に書かせて頂いたこちらのコラムをご覧下さい。

アカデミー賞有力! Netflix『この茫漠たる荒野で』 壊れた世界を調和へと導く意味深長な音楽
https://www.banger.jp/movie/53607/

サントラ盤のブックレットにはポール・グリーングラス監督の比較的長めのライナーノーツが載っていたので、こちらは学生時代の恩師に全訳をお願いしました。
『この茫漠たる荒野で』の音楽のこと、そしてパンデミックでボロボロになっている今日の現実世界のことなど、かなり大事なことが書かれてあったので、これはプロの方に翻訳して頂いたほうがいいなと思ったので。これを読むのと読まないのとでは、本作の音楽に対する見方(聞き方)もかなり変わってくると思います。

さてワタクシはJNHの音楽が大好きでして、学生時代(90年代前半)からいろんなサントラを買い漁っていました。

『メジャーリーグ』(89)や『摩天楼を夢みて』(92)…はコンピ盤でしたが、『逃亡者』(93)とか『ダイヤルM』(98)とか『ディアボロス 悪魔の扉』(97)とかいろいろです。

個人的に一番好きなJNHの作品は、何と言っても『わかれ路』(93)ですね。トゥーツ・シールマンスのハーモニカをフィーチャーした、コンテンポラリー・フュージョン系のスコアがすごくよかった。

しかしながら、サントラリスナーとの会話で「ジェームズ・ニュートン・ハワードが好き!」と公言しても、なかなか会話が盛り上がってくれなかったり、「あ、そうなんですか。ところで私はですね…」と華麗にスルーされたり、「通ぶってマニアックな作曲家を選びやがって」と思われたり、個人的な体験から言ってもいい思い出がほとんどなかった。「ビートルズのメンバーで誰が好き?」と聞かれて、「ジョージ・ハリスン」と答えた時の相手のリアクションに似ているかもしれません。

でも、いや、そんな感じだからこそ、「ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽はいいぞ」とワタクシは声を大にして申し上げたいわけです。

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