キアヌ暴走!…しかし「『レプリカズ』は家族の物語」と作曲家のマーク・キリアン氏は語った。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、『レプリカズ』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽は『アイ・イン・ザ・スカイ/世界一安全な戦場』(15)のマーク・キリアンと、謎の人物ホセ・”ペペ”・オエダの二人。

マーク・キリアンの映画音楽は10年くらい前から結構注目していて、初めて買ったサントラは『トレイター 大国の敵』(08)でした。『ザ・ウォード/監禁病棟』(10)や『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』(14)、前述の『アイ・イン・ザ・スカイ』のサントラももちろん持ってます。

なんでキリアンの音楽に興味を持ったかというと、「オーケストラにエレクトロニクス、民族音楽をミックスしたハイブリッドなサウンド」を得意とする作曲家なので、ワタクシの大好きなマイケル・ダナさんの音楽に共通するものがあったからなんですね。

だから機会があったら是非ご本人にインタビューしたいなと常々思っていたのですが、音楽を担当した作品が日本で劇場未公開だったり、サントラがリリースされなかったり、輸入盤は出てるけど公開規模が小さいので国内盤は発売されなかったり、なかなかライナーノーツを書かせて頂く機会に恵まれませんでした。

ところが今回『レプリカズ』のサントラ盤が発売されるということで、「この時を待っていた…!」とばかりにキリアンさんにインタビューを申し込みまして、ありがたいことに二つ返事でOKを頂いたのでございました。

ワタクシの好きなキアヌ・リーブスの映画のサントラ盤ライナーノーツを書かせて頂けて、その上ずっとインタビューしてみたかったマーク・キリアンにも詳しくお話が聞けて思わず嬉しくなってしまいました。

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『ハンターキラー 潜航せよ』のトレヴァー・モリスの音楽がとても親切設計な件

『ハンターキラー 潜航せよ』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
『ハンターキラー 潜航せよ』オリジナル・サウンドトラック (TOWER RECORDS)

先日『ハンターキラー 潜航せよ』(18)を観てきました。

この手の映画で前評判が高いというのはちょっと珍しいケースだなと思っていたのですが、いやいや前評判に違わぬ大変見応えのある映画でございました。

潜水艦映画と特殊部隊映画のアクションいいとこどりで、そこにペンタゴンとロシア政府、クーデター組織の駆け引きのドラマを加えて、米露潜水艦艦長の男のドラマと、ネイビーシールズ隊員の男の友情ドラマまで描いてしまう欲張り仕様。
しかも絶妙なタイミングで潜水艦と司令部・シールズの場面を切り替えるので、122分ずっと緊張感が維持されてダレ場が全くないのが素晴らしい。

ドノヴァン・マーシュ監督すごいよ!…と思いました。

『ハンターキラー』を観た後マーシュ監督の『裏切りの獣たち』(13)を観たのですが、これもまたよく出来た犯罪映画でした。
限定された空間でのスピード感のあるカメラワークとか、極限状況下での緊迫した人間ドラマの見せ方とか、犯罪者集団と軍人/政治家という違いこそあれ、両作品に共通する部分がかなりあったなーという印象。『裏切りの獣たち』を観て『ハンターキラー』の監督に抜擢したという製作陣はいいセンスしてます。

で、ドラマのテンション(和製英語のほうではなく、本来の”緊張”の意味)を高める音楽を作曲したのは、『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13)、『エンド・オブ・キングダム』(16)の作曲家のトレヴァー・モリス。『ハンターキラー』はジェラルド・バトラーの製作会社「G-BASE」も携わっているので、「それじゃあ音楽もモリスで」ということになったのでしょう。

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『ブラック・クランズマン』のテレンス・ブランチャードの音楽を自分なりに掘り下げて聴いてみた。

先日『ブラック・クランズマン』(18)を観てきました。
音楽は”A SPIKE LEE JOINT”に欠かせない作曲家/ジャズ・トランペッターのテレンス・ブランチャード。

「スパイク・リーの映画は音楽もイイ!」という話はよく聞くのですが、
まぁそれは多くの場合劇中の挿入歌のことなんですよね…。
今回のパンフもプリンスが歌うエンドクレジットソング”Mary Don’t You Weep”と、コーネリアス・ブラザーズ&シスター・ローズの”Too Late to Turn Back Now”についてはコラムで触れていたのですが、スコアについての話は全くなし。
ブランチャードは本作の音楽でアカデミー賞作曲賞にノミネートされたんですけどね。。スタッフ紹介のページでブランチャードの略歴が小さく紹介されていた程度でした。
でも劇中使用曲のリストがパンフに小さく載っていたのはナイスな心遣いと言えるかもしれません。

とはいえブランチャードのスコアは完全スルーというのは、
彼の音楽が好きな当方としてはちと寂しい。
…というわけで、ワタクシなりにあちこちで仕入れたネタや、
音楽を聴いていて気づいたことを少しばかり書いてみたいと思います。

 

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『荒野にて』のスコアは”考えるのではなく、感じる音楽”…だと思う。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『荒野にて』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽はジェームズ・エドワード・バーカー。

日本のサントラリスナーにもほとんど知られていない作曲家ですが、
ワタクシちょうどこの仕事の数週間前に『タイム・トゥ・ラン』(15)をDVDレンタルで観ていて、
「B級アクション映画専門の作曲家さんかと思ったら、アンドリュー・ヘイのようなアート系映像作家の作品も担当するんだなぁ」という感じで、どんな音楽を書いたのか俄然興味が湧いてきたのでした。

で、ランブリングさんから送って頂いた音源を聴いてみたら、
当方の想像以上に深遠な音世界を構築していたので、軽く衝撃を受けた次第です。

そして試写で映画本編を観たらさらに衝撃。
上映時間122分の中で、スコアが使われていたのは20分ちょっとでした。。
思えば『さざなみ』(15)もスコアが一切ない映画でしたね。。

それじゃあ今回もスコアがなくてもよかったんじゃね?…と思われるかもしれませんが、ヘイ監督はそうしなかった。
その理由を考えてみると、
やはり「荒野」という特殊なロケーションと、
そこを彷徨う口数の少ないナイーブな少年の機微を描くためには、
ここぞというところで音楽が必要だったのでしょう。

 

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ロキシー・ミュージック ロックの殿堂入り記念/自分はいかにしてロキシーとブライアン・フェリーの音楽と出会ったか

ワタクシ、ブライアン・フェリーとロキシー・ミュージックの音楽が大好きなわけですが、彼らの音楽を26年くらい聴いている計算になります。
(まぁ、それでも先日のフェリーさんの来日公演の客層の中では若年層に入るかもしれませんが…)

フェリーさんの曲を知るきっかけとなったのは、
高橋幸宏の1983年のアルバム「薔薇色の明日」でした。
B面にフェリーさんのカヴァー”This Island Earth”が収録されていたのですね。

高橋幸宏 / 薔薇色の明日 (amazon)
高橋幸宏 / 薔薇色の明日 (TOWER RECORDS)

普通、初めて聴いたフェリー/ロキシーの曲というと”スレイヴ・トゥ・ラヴ”だったり
“モア・ザン・ディス”だったり”アヴァロン”だったりするわけですが、
ワタクシの場合は”This Island Earth”。しかも幸宏さんのカヴァー。
当時小学校高学年だったかなー。屈折してます。

「ベールを脱いだ花嫁」で原曲を聴くのはもう少し後のことになるのですが。

 

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